理事長挨拶
整形外科スポーツ医学の進歩そしてスポーツ医科学を通じて心身の健康に寄与する事などを目的に、令和5年6月、一般社団法人 日本スポーツ整形外科学会(JSOA)が設立されました。この新しい門出の時期に理事長という大任を拝命し、あらためてその責任の大きさを痛感しております。
JSOAは全く新しいものではなく、長い歴史のある日本整形外科スポーツ医学会(JOSSM)と日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)が発展的に統合した学会です。JOSSMは、昭和50年(1975年)に日本整形外科スポーツ医学研究会として始まりました。一方、JOSKASの前身である日本膝関節研究会と日本関節鏡学会も同じ年に渡辺正毅先生を会長に発足し、平成21年(2009年)にJOSKASに移行しています。
つまりJSOAの礎は50年前に作られたということになります。
本学会の目的を達成するために、前身の学会が行ってきた整形外科スポーツに関連する事業を継続していきます。トップアスリートのみならずスポーツ愛好家や障がい者スポーツなど、トータルにアプローチできるスポーツ医の育成に取り組んでいきます。またスポーツ外傷や障害を治療するだけではなく、予防医学により一層力を入れていきます。
学術面においては、運動器スポーツ医学の基礎的・臨床的研究を推し進め、治療成績の向上をめざし、さらには新たな治療法の開発にもつなげていきます。そのためにOYIA(Outstanding Young Investigator Award)や学会研究助成、会員相互の交流を深めるための国内トラベリングフェローを継続します。また、両学会が推し進めてきた国際化を維持します。具体的にはISAKOS(International Society of Arthroscopy, Knee Surgery, and Orthopaedic Sports Medicine), AOSSM(American Orthopaedic Society for Sports Medicine)、APKASS (Asia-Pacific Knee, Arthroscopy and Sports Medicine Society)といった国際学会との連携、若手会員のためのGOTS、SIAGASCOTなどの国際トラベリングフェローシップも継続します。そして、英文オフィシャルジャーナルとしてのAP-SMART (The Asia-Pacific Journal of Sports Medicine, Arthroscopy, Rehabilitation and Technology)の発行を引き継ぎ、本学会の成果を積極的に海外に発信していきます。
スポーツの世界に心技体という言葉がありますが、スポーツ外傷・障害を予防そして治療するためには、局所だけではなく心も含めた身体全体にアプローチしなければなりません。この度の統合により、両学会からスポーツ医学の診療や研究に携わる学会員がJSOAに移行しました。整形外科医が学会の中心を担うことになるかと思いますが、他診療科のドクター、PTを含めたメディカルスタッフ、アスレチックトレーナー、スポーツ指導者など、領域の異なる医療従事者が一堂に会し、同じ土俵で運動器の治療や予防をディスカションしていくことが必要不可欠であり、この連携こそが運動器スポーツ医学の発展につながると考えております。
本学会はJSOAとして新しく生まれ変わった学会です。今後大きく発展していけるかどうかは学会員の皆様の熱意にかかっています。また、私も会員の先生方の声に耳を傾けつつ、その目的を達成するために誠心誠意努力してまいります。ご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。
一般社団法人 日本スポーツ整形外科学会 理事長
(弘前大学大学院医学研究科 整形外科学講座教授)
石橋 恭之